ひめがたり~いばら姫に真紅の薔薇を~

├電脳オタクの賭け

 玲Side
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僕は――


芹霞が櫂によって"生かされている"と知っていた。


その上で、好きになったんだ。

その上で、抱きたいと思った。


僕にとって"生"も"死"も関係なく、動いて僕に語りかけてくれる…今の芹霞だけが僕の真実。



僕は芹霞という存在が欲しいんだ。

僕には芹霞という存在が必要なんだ。


――櫂……。


真実に惑っても芹霞は…

僕ではなく、此処に居ない櫂を想って泣く。


芹霞にとって櫂の位置づけは絶対的で。


どうしようもない嫉妬に胸が焦げ付く。


此処まで想われている櫂が酷く羨ましく、酷く妬ましく。



違う――。


芹霞にとっての僕の存在は、

櫂という存在と意味合いが違う。



判っていたことだったのに。



尚強く感じる――確信。




芹霞は櫂を愛している。



本人が思う以上に深く。


本人がそれを"恋愛"だと認めていないだけで。



思い知らされる。

打ちのめされる。



嫌だ。


櫂に渡したくない。



ずっと気づかないでいてくれよ。

ずっと眠り続けていてくれよ。



僕だって櫂と同じく君を欲している。


僕が櫂の立場でも、同じことをしただろう。



ただ――…

出会いが遅かっただけの話。


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