漆黒色のその翼。


 目撃者に“生”はない。





 第2話 闇色の翼





「そろそろ心臓を喰らいに行くとしますかぁ!」


 久遠と一緒に暮らし始めて早くも3日が経過した。そして今は午後10時頃。月が空に昇り、町は暗黒の空と静寂に包まれていた。
 健吾や茜には、僕が死神になったことをまだ伝えていない。伝える勇気が、ないんだ。伝えたら、この関係が壊れてしまうんじゃないか……そう思うと、怖くて。


「行くしか……ないんだよね」


 「消滅したくないならね」と言ったかと思うと、久遠は僕の横を通り過ぎ、ベランダへと続く窓を開けて外へ出た。


「えっ、ベランダから?!」

「そうだよ?屋根の上をジャンプして人間を探すんだ♪」


 屋根の上をジャンプ……。
 久遠と出会う前の僕なら、屋根の上を飛び移って喰らうために人間を探し回る……なんて、思い浮かびさえしなかっただろう。いや、普通はそんなこと思い浮かばない。
 そして僕は、ここ3日間で自分の身体の異変に気が付いていた。後、数日で夏休みになるのにも関わらず、体育テストをした時……前までは走っただけで息切れをしていたのに、体育テストでは息切れをしなかった。そのせいか記録はいい方で……健吾の驚いていた顔が忘れられない。

 まぁ……とにかく、まだ不安があるけれど、そんなことがあったんだ。体力がついているのは確かだ。もしかしたら本当に屋根の上をジャンプしていくことが出来るかもしれない。
 久遠は真向かいの家の屋根の上にジャンプすると、「悠夜の番だよ」と僕の方を見た。ベランダに近付き、地面を見下ろしてみる。……3階といえど普通なら落ちたら 死ぬよね。


「ジャンプ力もあがってるから大丈夫だって!おいでっ」


 久遠にそう言われて、僕はゴクリと生唾を飲み込んだ。そしてベランダの柵の上に立ち、思いっきりジャンプをする。思ったよりもふわりと浮いた僕の身体は、久遠のいる屋根に無事に着地した。


「そうそうっ、そんな感じ!よーし、このまま心臓を喰らいに行っくぞぉっ!」


 楽しそうに笑う久遠を横目に、僕は落ちなくてよかったと安堵の息を吐いた。

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