記憶 ―惑星の黙示録―



ふわふわ浮いて…

気持ちがいい。

さっきのような風圧もないし、穏やかだった。

今までのように下へではなく、
私たちの体は、
ゆっくりと横へ流されていく。


「よぉしっ!風の道の気流に乗った!」

リュウが嬉しそうに叫んだ。


「…か、風の道…?」

私は口の乾きを潤すように、唾を飲み込んでリュウに聞いた。


「そう、よく見てごらんよ。俺たちが流されている宙だけ、他の宙と色が少しだけ違うでしょ?これが、風の道。」

私は体勢を整えながら辺りに目を配る。


「へぇ…、とにかく助かったんだよね?良かった…」

晴れて鬼に食われる心配は無くなったわけだ…。


リュウの言う通り…、
私の目にも段々と風の道の姿が映ってくる。

半透明な高速道路の陸橋が、
青い空にすぅっと溶け込んで、幾つも通っているような…

それは、不思議な光景だった。


リュウは、ふふん、と鼻で笑った。


「風だって道がなければ進めないんだ。ただ、下から見ても、横から見ても、上からでさえ見えない。実際に風の道の気流に乗らないと、道は見えないんだ。」

「はぁ…」


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