ハルジオン。
第三章 愛染窟

(一)

(一)


百合子は、八坂神社の横に建つ山車小屋の壁にもたれ掛かり、思い詰めた顔で携帯電話を開いた。

ディスプレイを見つめる。

"たっちゃん"

昨夜、タイムカプセルを掘り起こした後で靖之から教えてもらった番号が五件、発信履歴に並んでいる。

「はあ」

とため息が漏れる。

昼からかけているのだが、いっこうに繋がる気配がない。

もう新幹線に乗ってしまったのだろうか。

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