流華の楔




「(容保様の…。てことは、あの方が呼んだのか…)」


これ以上新選組の者が粗相を起こせば、それは容保にとっても痛手となる。


密命として、近藤に暗殺を命じるのだろう。





「…和早ちゃん」



「え…あ、なんですか?」


「ぼーっとしてません?」



「あ…、すみません。考え事してました」




張り詰めていた気を抜き、何も悟られぬよう「はは」とごまかすように笑う。



この時。
相手が斎藤だということを忘れていた。




「ねぇ」



斎藤の両手が両頬を包み込む。



「…あの、」



そのひんやりとした感触に、思わず彼を凝視した。


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