恋愛色々超短編集
初々しい恋

残念ながらべた惚れ


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初々しい恋 Ep.01
 ♂笹山(17)×桜木♀(17)の場合
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きょろきょろと店内を見回したあと、適当に雑誌を手に取りぱらぱらとめくる。

何冊か読んだところで本来の目的の炭酸飲料を選びに行った。

いつものサイダーを手に取ってふと右を見ると、冷蔵庫の前で悩むキミが居た。

「あ…桜木、じゃん。」
「わ、笹山?気付かなかった〜!」

緩いジーンズにTシャツという簡単な格好。
多分メイクもしてなくて、髪だって簡単にまとめてあるだけ。

それでも、私服だと印象違うね。なんて笑う顔に心臓は早くなるばかりで。

「家この辺なの?」

手に取ったサイダーを手のひらで転がしながら聞くと、冷蔵庫を開けてジュースを選びながら君は答えた。

「そうだよー。高校からね。」
「へー、まあ中学違うもんな。」
「ね。」



"ありがとうございましたー。"

感情のこもっていない事務的な挨拶を背中に感じて、外に出た。
じゃあ、とは言えなくて、言われなくて、なんとなく、流れで、隣には桜木。

24時間営業のそこは冷房がしっかり効いていたから、涼しくなったはずの夜の住宅街さえもむわりとした空気に感じさせてしまう。

「暑いねー」
「な。桜木の家どっち?」
「ん?こっち。笹山は?」
「あー、俺、は…反対かな」
「そっかー。じゃあ、またね」
「ん…。またな。」

送ってくよ、一言が言えずに、笑顔でまたねなんて言われてしまって、歩きだしてすぐに振りかえる。立ち止まってすこし見ていると君も振り返って、大好きな笑顔を見せてくれた。そのまま固まった俺は、また前を見てイヤホンを耳にさす君の後ろ姿を見つめていた。角を曲がるまで。


「…気持ち悪いな俺。」


わしゃっと髪を掻いて自分の家に向かって歩きだした。

すっぴんでも、気抜きまくりの服でも、それでも君は輝いていた。
俺、残念ながらベタ惚れです。
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