完熟バナナミルク
500円-税込み99円=お給料+バナナ
「所長、友情って何なんすかね?」

あたし、椎名ネジコは只今、変態…あ、間違えた。
自称天才発明家、「獅子頭忠明」率いる、魔法のステッキ製作所で助手をしている。

「椎名君。ニートな君と、引き篭もりな私の、どちらがその答えを導き出せると思っているのだ?」

「はぁ?ちょっと、待ってくださいよ。あたしのどこがニートだってんですか!ていうか、この流れ脱線しそうなんでやめときます…。」

毎回そうだ、あたしが何か言うたびに、あの人はあたしをニート扱いする。
ちょっと待って、あたし、面接してここ受かったよね?
確かに、職歴無しで、22歳で、今まで仕事なんてしてなかったけどさ。
今は違うじゃん?あたし、ここの従業員じゃん。
電話だって全部あたし取るし、買出しだってあたしの仕事だし、この、おんぼろ屋敷の掃除だって、全部あたしだし!!
てか待って、あたし、お給料もらってなかったわ…。

「所長!友情なんてどうでもいいっすわ!お給料下さいお給料!!」

そう言ったあたしに、所長は500円玉を渡すと、近くのスーパーでバナナを買って来るよう勧めた。

「お…おさる…?バナナて…あたしはおさるさんなんすか!?」

「馬鹿だな椎名君、バナナは幸せの象徴なのだよ。まず、5本で99円のバナナを手に入れる。そこから得られる幸せを、君は、考えた事があるかね?」

んーん、ふに落ちない。あたしは、ぶすっとしながら外へ出た。
窓辺には、所長のアフロヘアーが、見え隠れしている。何者なんだあの人は。
ライオンの様な顔に低い声。毎日毎日、棒っ切れを磨いている。
そうかと思えば、あたしの行動をメモしてたり…。
うち帰ろっかな…、はぁ…。でも、うち帰っても、嫌味言われるだけだし。
どうすりゃいいんだろ、あたし。
今日も賑わうスーパーマーケット。雑誌コーナーには中学生が群がっている。
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