雨音色
Knowing each other
「おはよ。母さん」


朝の8時30分。


いつもなら未だ布団の中で夢を見ている時間である。


日曜は昼まで眠るのが彼の趣味であり、楽しみであった。


「おはよう。早くご飯を食べてしまいなさい」


ちゃぶ台の上には湯気を立てた味噌汁とご飯、


その隣には少量の漬物が置かれていた。


「はぁい・・・」


寝ぼけまなこの彼は、欠伸をしながら正座をする。


「今日お嬢様に会うんでしょ?髪もきちんと整えて行きなさいね」


母が心配そうな様子で彼に言う。


彼は味噌汁をすすりながら頷く。


「前回は牧先生が一緒だったから良かったけど、心配で仕方ないわ。

くれぐれも迷惑をかけてはなりませんよ」


彼は黙ったまま漬物を白米の上に乗せ、それをかきこむ。


「分かった?壮介」


「ふぁい」


最後の米粒と味噌汁を同時に飲み込み、彼は茶碗を持って立ち上がった。


「片付けは良いから、早く着替えてらっしゃい。

待ち合わせに遅れたら、それこそ大変だわ」


彼は苦笑いをしながら、茶碗を流しの所に置き、洗面所へ向かった。
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