秘密の花園
シミュレーション3

魔王の手中





「はあ…はあ…」


こんなに走ったのはいつ振りだろう。


きっと高校2年のマラソン大会以来だ。


あの時は辛かったなあ…。


どんなに頑張って走ったところでもらえるのはヤクルト1本。


けれど今、私は無報酬にも関わらずあの時より必死で走っている。


…捕まったら二度と花園には帰れない。


行き先は魔界。


しかも片道切符しか用意されていない。


「待てよっ!!」


後ろのサタンがワーワーとわめく。


待つわけないだろ!!


人混みを避けながら街中を駆け抜ける。


水瀬さんにはちゃんと挨拶出来ないわ。


魔王には追いかけられるわ。



今日はなんて厄日だ。



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