【短編】プロポーズはバスタブで。
 
鋭く言う孝明に笑ってごまかす。

ワンテンポずれていてもちゃんと実感しているんだから、そこら辺は大目に見てほしいトコだわ。

とは言えないから、ヘラヘラ笑って指輪と孝明を交互に見た。


その直後───・・。


「ひゃっ!!」


急に手が伸びてきて、再びあたしは孝明の膝の上に乗せられた。

それから孝明は、ほの暗いバスルームの中でも分かるくらい顔を赤くして言ったの。





「なぁ、結婚・・・・しよっか?」






あたしの涙を唇でそっと拭って、一目で恋に落ちたときと同じ爽やかな笑顔で見上げて。

返事はもちろん決まっている。

孝明以外の人のところには、お嫁に行ける気がしないもん。


いつものホテルの、いつものバスタブ、そこに響くのはいつもあたしの甘い声だった。

けれど今日は、彼の甘い囁き。















―――――――
―――――
―――
 

< 36 / 42 >

この作品をシェア

pagetop