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それからしばらくした10月上旬。

結婚の話もトントン拍子に進み、晴れて婚約者同士になったあたしたちがデートに選んだのは、山あいにあるホテルだった。

孝明はあたしと別れるつもりなんだと勝手に勘違いをしたために断ってしまった、あのホテル。


やっぱり今回も道が悪くて、ホテルに着いたのは日暮れ頃。

10月ともなると山の空気は凛としていて、上着を羽織っていても体が芯から冷える。

空を見上げながら腕をさすっていると、ふいに孝明の手があたしの両手を包み込んだ。


「こうすれば寒くないだろ?」


そう言って、何度もハァーと息を吹きかけてくれる。

それから孝明はイタズラに言う。


「こんだけ寒けりゃ、夜は裸でくっつかないと風邪引くな」

「そうだね」

「寝かさないよ?」

「望むところ!」


婚約しても、すぐに一緒に暮らせるわけじゃないあたしたち。

春に結婚式を挙げるまではお互いに別々のまま、遠距離。

だからこそ、それまでの寂しさを埋めるように体を求め合うの。
 

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