PRINCESS story

愛無き婚礼


私は、今、婚礼の間へ移動している。


隣には、奏斗王子。


私の夫になる彼は、すらっと背が高く、王子という呼び方がとてもよく似合う。


なんとなく近付きがたい雰囲気を持つ彼だったが、それが彼の魅力なのだろうと私は感じていた。


今夜初めて出会ったそんな彼と、今から私は婚礼の儀を挙げる。


私と彼は、まだ一言しか交わしていない、言ってみれば赤の他人。



それなのに、もう婚礼の儀……

つくづく、ありえないと思う。



宮殿にいる今も、自分が王室に嫁ぐという実感が湧かず、雲の上の世界に足を踏み入れてしまったかのような気分だ。



< 32 / 399 >

この作品をシェア

pagetop