小悪魔術師キス・ディオナ
燃えちゃう恋には、ご用心?
暗い、竹林の中。一人の少女が走っている。年は十四歳ほどか。白のブラウスに緑のロングスカート、長い黒髪を振り乱し、息も絶え絶えに、時折後ろを振り返りながら、それでも足は止めない。

-誰か、助けて!-

少女は、追われていた。後ろからは、チビ、デブ、巨体、三人の男。必死に逃げようとするが、

「ああっ!」

石につまづき、少女は転んでしまった。そして少女に追いついた三人。

「おい小娘、この竹林が、誰の領地か知った上で入ってきたのか?」
「この領地は、我らが親分、竹取の悪鬼那(おきな)様の領地!」
「その領地で悪鬼那様に許可も得ずに竹の子狩りとは、万死に値する!」
「ゆ、許して下さい。こ、この竹の子が無いと、おじいちゃんの薬が作れ…」
「やかましいっ!」
「きゃっ!」

地面にへたり込み、体を震わせながら、今にも泣きそうな表情をしている少女。
そんな少女に、その三人の男の内、一番大きな体をした男が、ふいに優しげな声色で少女に話しかけた。

「…まあ、しかし、初犯っぽいので、今回だけは大目に見といてやろう。命だけは助けてやる。
反省もしているようだしな。」
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