CHANCE 1 (前編) =YOUTH=
2.Spring
ヒカルちゃんの、T大学合格を祝う為に、ケントは今、車で彼女の家に向かっていた。
家のすぐ近くの路地に停車して、携帯を取り出した。
プルルルル…プルルル…
『もしもし、ケントさん。』
「ヒカルちゃん、着いたよ。
今、家のすぐ近くのところに車を停めているから、出ておいで。」
『直ぐに行くから。』
1分もしない内に彼女が出てきた。
淡いピンクのワンピースに、白いミニベスト、黒のハーフブーツを履いて、首元には、俺があげたキャッツアイのネックレスをしてくれていた。
「久しぶりだねぇ。
さぁ、乗って!」
彼女を助手席に乗せて、新宿方面へと向かった。
『ケントさん、最近凄く忙しそうですね。
昨日もラジオの生放送で出てましたね。』
「もう毎日大変だよ。
撮影や取材、収録と、なかなか休みが取れなかった。
今日は、久しぶりのオフなんだ。」
『ちゃんと食べてるの?
睡眠時間は足りてるの?』
「レコーディングの時には、食う暇も無いくらいだけど、それ以外は、ちゃんと飯食ってるよ。
睡眠時間は、毎日6時間は有るから大丈夫だよ!」
『今日は、どこに行くの!?』
「大学の合格祝いに、レストランで食事でもと思って。」
『フランス料理が食べたい!』
「じゃあ、ここからちょっと遠いけど、海の見えるオーシャンビューのレストランと、さほど遠くない所に在る、自然の川や草木に囲まれたレストランのどっちが良いかな!」
『う~ん……、海の見えるレストランが良い!
その方が、長くドライブ出きるし、ケントさんと海って、なんか似合っているから、私のデジカメで、海をバックに写真撮りたい。』
「OK!
じゃあ、一緒に写真撮ろうな!」
『ついでに、どっかでお泊まりしようね。
明日の朝まで一緒に居たいから。』
「良いのか!?」
『大丈夫だよ!
パパもママも、私達が付き合ってるの知ってるし、ケントさんだったら《嫁にあげても構わない》って言うのよ!』
「ヒカルちゃんはどうなんだい?
俺と二人っきりでお泊まりって、怖くないの?」
『構わない…。
私ね、再会した時から、今日の日を待ってたの。
私の全部を、ケントさんに見て貰いたいし、知って貰いたいから。
その代わり、絶対にお嫁さんにしてよ。』