ブリーフ エタニティ
二度目の再会


5月頭の土曜日の昼過ぎ。
私は慣れない入国手続きを済ませて、松山空港に降り立った。
外に出なくてもわかる湿度の高い空気と耳に入る中国語に胸が高鳴る。

予定ではこの到着ロビーまで恵司が迎えに来てくれるはずなんだけど…

初めて降り立つ場所、しかも海外旅行なんて大学の卒業旅行ぶりで思わずキョロキョロしてしまう。

それらしき人を見つけようと辺りを見回していると、後ろから聞き馴染みのいい声が聞こえた。

「若菜!」

後ろを振り向き、一番会いたかった人の顔を見つけると自分でも驚くくらい安心したのがわかった。
白いTシャツにルーズなジーンズ。
家からそのまま出てきましたといった飾らないファッションが彼らしい。

「久しぶり!会いたかった」

手を振りながら彼に近寄り、こうしていいものか少し悩んだけど挨拶のハグをする。
前よりも大人になったのか、自分でも驚くほど素直に感情を表せるようになったものだ。

「どうしたの、珍しく素直じゃん」

彼も驚いている様子。
まんざらでもなさそうに背中をさすってくれるのが嬉しかった。

「一緒にいられる時間が限られてるなら、意地張ってるのももったいないなと思って」

腕をほどき、彼の目を見ながら伝えた。
慣れない環境での仕事が大変と散々電話で聞いていたけど、思っていたよりも疲労が顔に出ていなくてよかった。

「ちょっと調子狂うけど、その方が俺も嬉しい。
3日も一緒にいられるから、出来る限り台湾のいいところを案内するよ。
おいしいもの食べながらゆっくり話そう」

スーツケースをさりげなく私の手から奪い、空いた手をつないで彼が歩き出した。

こんなふうに手を繋いで歩くの、懐かしいな。

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