月光~moon light~
黒猫
「あの、」
「うん?」
「名前って、」
「名前?」
「名前・・・なんて言うんですか?」
そう聞いたあたしに男は少し驚いた目で見る。
「いや、その、名前知らないと不便だからっ」
慌てて言葉を付け足したあたしに、
男は「あぁ」と納得したように呟く。
不便だというのは嘘じゃない。
でも、男の名前を知りたい好奇心でもある。
「・・・名前は、特にない」
だから
男の言葉を聞いた時、酷く落胆した。