知らなかった僕の顔
「ひどいな阿部ちゃん。そこまで言わなくても」


阿部ちゃんは、ひとつ大きな溜め息をついて言った。

「宮田くんはね、普通の男になんかなっちゃダメだって。女にうつつを抜かすなんざ、宮田くんには全然似合わないよ」


似合わないと言われても、完全に僕は森若ちゃんに、うつつを抜かしていた。


「いや…だから僕ほど普通を絵に描いたような男はいないから…」


「どこで引っ掛けた?」
なおも無表情に、阿部ちゃんが言った。

「え?何を?」

「女」


阿部ちゃんの口の悪さには慣れてるけど、その言い方には気分が悪かった。


僕じゃなくて、森若ちゃんが侮辱されたような気がしてすごく嫌な気分だった。

< 87 / 203 >

この作品をシェア

pagetop