奈良の都の妖しい話

まるで鮮やかな蝶のように

時は奈良時代。唐風の文化である天平文化が栄えたころである。
とある立派な屋敷の松の木に一人の顔立ちの良い少女が愛猫を抱き抱えて座っていた。

「何度見てもいい景色・・・。」

「みゃお～う。」

「あ・・・！姫っ！」

「きゃ・・・！あ・・・なんだ黒矢ね驚かさないでよ。」

「なんだじゃありません！姫はもうすぐ十六になるというのに、いつまでもそのような遊びを・・・！」

「もう、黒矢はうるさいわね。はいはい、今降りますよ。・・・ちゃんと受け止めてね。」

「え、ちょ、姫！」

少女は愛猫を抱えたまま、黒矢の基へ飛び降りた。