溺愛プリンス

王子の意地悪なキス




なんで……。



頭にはたくさんの「?」マーク。
あたしはまるではりつけにされたみたいに、身動きもとれずにいた。


目の前には、優雅にお茶してるハロルド王子。
午後の柔らかな日差しに、黒髪がキラキラと光を放っている。


高価な紅茶と、有名なスイーツ。


いつものテラス。
いつもと同じ……。


って、なんで同じなの!?


昨日だよ?
昨日、あたし王子の頬引っぱたいちゃったんだよ!?


それなのに……どうして、王子はまたあたしとお茶しようなんて思うの?


いたたまれなくて、目の前の王子をこっそり盗み見た。




「…………」




英文の小説。
彼の長くてきれいな指が、ハラリと紙をめくる。

伏し目がちの瞳。
長いまつ毛が頬に影を落とし、ハロルド王子に儚げな印象を与えた。


彼は、キレイだ。



「そんなに見つめられると、困るな」



へ?

その言葉にハッとして我に返る。
小説の文字に目を走らせていた視線は、いつのまにかあたしを真っ直ぐに見据えていた。


やだ、見てた事、いつから気付いてたの?


ブルーの瞳に吸い込まれそうになりながら、あたしは慌てて視線を逸らした。



「……あ、あの……」


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