―渉side―




誰もいない放課後の図書室は、不気味なほどに静かで。




しぃのふわっとした甘い匂いが、俺の制服にもまだ残っている。




抱きしめたぬくもりもまだ…消えない。




俺は本棚にもたれかかり、なだれ落ちるように床に座り込んだ。




「何で俺は…あんなこと…」




困らせるつもりなんてなかったのに




言うつもりなんてなかったのに




「…俺を選ばなくて…正解だよ…」




何が正しいかなんて

わかってる



いや、わかってた




俺を選んだって




何もいいことなんてないことぐらい…




「バカだな…俺……しぃにあんなツラい顔させたくなかったのに…」




目頭が熱くなり、俺は指で押さえた。




初めてだったんだ


こんなにも誰かを想ったのは




自分以外の誰かを


大切にしたいなんて




俺は恋なんて出来ないって思ってた




人を愛せないと思ってた




この世で一番


愛して欲しかったあの人に




捨てられたあの日から…




それでもおまえと出逢って




おまえは俺と似てるって思った




生きることに

罪の意識を持ちながら




生きる意味を探してた