溺愛キング

葛藤

「あっ、あ…藍、飛さ、ん!」


走ってきたのか、俺の名前を呼ぶのもしんどそうだった。

翼は近寄り、顔を覗きながら


「どーした。ゆっくりでいいから、何があった」

「あ、あ……のっ!」


少し落ち着きのない感じで、必死に伝え様としていた。

ピクッと俺の眉が動いた時――…


「るっ、類さんから連絡が入ったんです!」

『………!!』


座っていた椅子がガタッと揺れた。


『どーゆうことだ。何で類さんから連絡がくるんだ!』

類さんという単語に過剰に反応してしまう。


「や、矢耶ちゃんを見つけたと連絡がきましたっ!」

『な、に、、、矢耶が…』

「それはほんとなの?!」


黙っていた海亜がいきなり大きい声をあげ、飛びついた。


「ゔっ!ほ、ほんとですっ姉さん!ぐっ苦しいっす!」

海亜は襟を掴み、これでもかと思うくらい揺さぶった。

「それで矢耶はどこにいるの?!類さんと一緒なの?てか、大丈夫なの?ねぇ!どーなの?!」

『海亜やめろ。そんなに動かしたら喋れないだろ。おい、詳しく聞きたいが時間がもったいない。今、矢耶はどこにいる』

焦る気持ちを必死に押さえて聞く。

握り締めた手から、何からくるのか分からない汗が出てくる。
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