ロートリア邸の一室。

俺とエリコとカヤは、紅茶とクッキーでもてなされている。

「ほらカヤ、おいしいわよ」

いつかのように、エリコが妹の口にクッキーを押しつける。

カヤは照れながらも、素直に口に含んだ。

「おいしい!」

「そう、よかったわ」

二人は微笑み合った。

ほのぼのとした姉妹を眺めながら、俺はカップを傾ける。

――あれから、三ヶ月近く経った。

エーデルシュタッドの死は、魔導石の事故として処理され、命の魔導石の存在は世間に伏せられた。

帝国としても、神の領域に至る魔導石が存在したとなれば、ディーニディル教国に睨まれる。

その命の魔導石を最初に発明したのがディーニディルだとしても、表立って研究をしていない国だから、何とでも言い逃れられてしまう。

俺とカヤはその日中にロートリア家自慢の駿馬を借り、夜駆けの許可を貰って、休まずにセスリスの地に向かった。

エーデルシュタッドが調合した薬はちゃんと受け取っていたので、セスリスの病カウハも鎮静に向かった。

カラトには、過去の経歴など、問い質したいこともあったが、忙しさに追われているうちに宰相から招待の知らせが来たので、結局まだ何も訊いていない。

本当は、宰相の呼び出しになど応じるつもりは毛頭なかった。

二十年以上、俺を放置していた奴と、今さら昔話をしてやる気にはならない。

俺が来たのは、最近普及し始めた通信機でエリコにしつこく促されたからだった。