「デルフ(軍人さん)、ちょっと薬草庫から粉末を取って来ておくれ」

俺は頷き、すり臼の縁にすり棒を引っ掛けて立ち上がった。

薬草庫は、小屋から出て少し歩いた小川の横にある。

傷が塞がり、体力が回復した、帰る場所も使命も無くした帝国人を、カラトは弟子になれと半ば無理矢理引き止めた。

治療費の分は労働で返せということらしいが、兄弟子カヤはやはり気に入らないらしく、どうにも気まずい。

だから、薬草庫の横の川で水を汲んでいるカヤの背中が見えた時、少し足が鈍った。

足音に気付いた彼女は肩ごしに一瞥を寄越すと、目礼して再び仕事に戻った。

薬草庫の、古びて外れそうな戸を引くと、ひんやりとした空気に薬草と古い建物のにおいが乗って溢れてくる。

戦場を離れて二月も経っていないのに、血と土のにおいより、薬草のにおいに馴染んでしまったのは奇妙な感じがする。

カラトに頼まれた粉末の瓶を麻袋に突っ込み、俺は秋の足音を感じながら木々の間を歩いた。