「通信機?」

エリコがグラスを傾けかけた体勢のまま、目を丸くした。

ケビンが胸を張って頷く。

「おうよ! すげぇだろ。俺とこいつとあと二人だけが選ばれて、エーデルシュタッド博士の手伝いしてるんだ」

「でも、そんなのって……」

エリコがグラスを置いてこめかみを押さえる。

「どういう仕組みなの? 遠くにいる人と喋れるだなんて」

「記憶の魔導石の論理の応用なんだ。限界まで熱した魔導石は超高密度に記憶を溜めるから。高温の時の記憶を記録させてそのまま繋ぎ止めて――」

「ごめん。わかんないわ」

「おい、聞けって!」

手をひらひらさせて、エリコはワインを傾ける。

騒ぐケビンと適当にあしらうエリコ。

そして、それを横で見守る俺。

これが俺達の休日の夜の常となっていた。

この時は、まだ幸せだった。

だが、今思い返せばこの穏やかな日々は後悔の日々だ。

どうしてあいつの――エーデルシュタッドの心の底の闇を見切れなかったのか。

そう、あれはある夏の夜だった――。