カヤはまじまじと俺を見つめ、やがて顔をしかめた。

「そう」

彼女は頷いて、自分の上掛けを畳みだした。

「カヤ」

なぜか機嫌が悪くなったカヤは、無言でこちらを向く。

エリコはそこまで妖しげな店にいたわけではない。

何か勘違いしているようだが、説明も面倒なので、俺は別のことを口にした。

「研究所に姉がいると言っていたな。知っているかもしれない。名前は?」

カヤは荷造りを再開して、ぽつり、と呟いた。

「ユエ」

「ユエ……。知らないな」

「そうでしょうね。いかがわしいお店に入り浸るような人と、姉様が知り合いのはずがないわ」

今までは声を落としていたが、急に声が高くなったので、他の旅行者の視線が一斉にこちらに向いた。

「おい、それなんだが誤解が――」

カヤ全く取り合わず、無視を決め込んで荷造りを続ける。

頭を抱えたくなった。

どうして、嫉妬深い新妻みたいな怒り方をされなければならないのか。

何度目かの溜め息を吐き、俺も荷造りを始めた。