どうして逃げるのだろう。

死など恐ろしくないのに。

俺は身体が千切れるような痛みに顔を歪めながら走った。

第九部隊員の処刑の日、帝都の南の山を越えたセスリスの新都で、各々の魔導石を使い、彼らは逃亡を始めた。

俺も、気付いたら逃げ出していた。

追っ手も、この右手で焦がしてやった。

どんなに腕の良い魔導師(魔導石の使い手)であっても、身体の一部に石を持つ俺達には適わなかった。

魔導師が石を使うまでには、数秒時間がかかるのだ。

その無防備な時間が、俺達にはない。

使うだけ使い、一時は俺達を英雄と持て囃した帝国のたった一つの失敗は、処刑前に右手を落とさなかったことだろう。