チャンピオン【完】

14※ラスタリング





朝の食堂に用意されていた翌日のスポーツ新聞には各紙、貴丸の日本復帰試合の様子がきちんと載っていたが、私の小さな後姿の写真があったのは一紙だけ。

内容も、私とミコトのことにはほとんど触れられていなかった。





学校で顔を合わせた了くんはやっぱりあの試合を見に来ていた。


『とっても面白かった。チケット高かったけど行って良かった』

と笑って言った。


頼むから私の事を言いふらさないでくれと懇願したら、


『ああ言うハプニングはみなかったことにするのが、プロレスの楽しみ方だよ?』

と、逆に窘(たしな)められた。


『心配だったら、口止め料ちょーだい。貴丸さんのサイン欲しい』

あまりに男らしい彼の頬笑みに、私は一瞬心奪われそうになった。


バカップル呼ばわりしていて本当にごめん。

私、もっと変なバカップルに殺されそうになった。

< 118 / 131 >

この作品をシェア

pagetop