それでも痩せたい恋物語
彼氏の甘え 彼女の甘え
私の彼は正直甘い。
ケーキだってお菓子だって、いいよいいよと私にくれる。
「欲しいの?」
うん、なんて言ってないのに、封を開けて私に差し出す。
まぁ…うん、って言ってるみたいなもんだけど。

「おいしそうに食べるねぇ」
「だっておいひいもん」
彼の分のお菓子だって、食べてしまう。
目の前に食べ物があれば。
だめだと思って、控えようとはするんだけど。
こうやって許されてしまうと、甘えが出てしまうというか。

甘えるのも悪いけど、甘やかすのも悪いと思っちゃう。

そしていつも通りの夜。

「うー、いい湯だったわ」
何気なくお風呂上りに目に入った体重計。

あれ、最後に計ったのいつだっけ。

背中に冷や汗を感じて、目の前の鏡を見てみる。
いや、ここ最近何となく太ってきた気が…。
太もも、太くないか?

顔もいくらか丸くなってるような、そんな気が。

そして恐怖は目に見えてやってきた。

体重計に足を乗せ、そっと目を開く。
「え・・・」
それは思ったよりも重い現実で。
もともと痩せている方ではないし、丸顔だし。
それでもガリガリに痩せているよりは健康的だと思ってた。

しかし、こんな風に形として現れると…。
そこは私も女だし、ぷくぷくはいや。

「・・・あれ、食べないの」
ハッとして我に返る。目の前にはいつも通りのお菓子がある。
「うん」
頷くと、彼はふーん、とだけ言ってお菓子に手を伸ばす。
袋を開けると一瞬でいいにおいが漂う。

「全部食べちゃうよ?」
一線だけを見ていた瞳を逸らし、また頷く。
恨めしくも感じるけれど、仕方ないと思いその日は我慢をした。



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