黒の世界。感覚を全てを奪われた無の世界。自分がどこに何をしているかも分からないくらい頭をおかしくさせている。

そこにシルフィーはいた。

真っ黒の空間を茫然と見つめる。麻痺したように脳は動かない。すっきりしない頭を軽く振る。


(私、は……)

 自分は死んだのだろうか。どこもかしくも黒に覆われ光を一切感じない。そう思ってもおかしくは無いだろう。


ーー光も色も物体の無い場所。



「私、死んじゃったのかな……」

 声に出せば妙に反響して耳に届く。シルフィーは確かめるように、両手を見るように腕を前に突き出す。黒に侵され何を見えない。今、本当に腕を突き出しているのかも分からない。

 自分が何をしているのかも分からない。



(……皆も)


 死んでしまったのだろうか。



 気配すらも感じない。無償に不安になった。シルフィーは見えない世界で走り出した。あてもなくひたすら前を走る。


 ただ真っ直ぐに。


 孤独感がシルフィーを襲う。

 誰でもいい、誰でもいいから会いたい。


 ーー頭の中で仲間の顔が巡る。



 一筋の涙が伝う。



 突然、真っ黒に染め上げた空間を引き裂くような鋭い光がシルフィーを照らし始めた。目がつぶれるような光を腕で遮り、まばゆく暖かい光は全身を包み込んだ。



第八章 縁の世界