滅び行く時は刻々と。
それでも守りたいものを護るため彼女は揺るがない。


それはとてもとてもーー



第三章 壊滅




空を吹き抜ける穏やかな風が小さな音を立てる。昼間のカラッとした暑さはどこへ行ったのか。冷たい空気が肌を撫で体が縮こまる。

無事にカルシュを仲間にしたシルフィーは火山内部を脱出し、山頂に立っていた。冷気が結われてる長い髪を遊び草原の匂いを運んでいた。

暗黒の空が二人を見守っている。無数もの星が散りばめられ真上には一番光り輝く月が辺りを明るく照らしていた。夜中を表していた。



「これからどうするんだ?」

カルシュは腕を組み壮大な草原を一望しているシルフィーに問う。しかし目を輝かせ幻想的な景色に夢中になっている。返答がないシルフィーを置き、フェンは人差し指を顎に当てた。


「今度は自然の賢者の力を持つルーフ・パブリックスを探しましょう。自然の領域に行かなければ」

自然の領域といえば今、炎の領域『グァン』から南へ進むと行ける。



「でもシルフィーの体力が心配よ。少し休んだからといって少ししか回復してないと思うわ」

心配そうに視線を彼女に向ければ包帯を巻きつけている体が目に入る。興奮している様子を見せているが相当の怪我を負っているため本当は辛いだろうと思った。

かすかに表情が強張り痛さを堪えているのも分かる。


「どこか休める場所を…」

シルフィーの身を案じ困った顔をした。フェンの言葉が言い終わらないうちにカルシュは早足にシルフィーの元へ行く。


「どうしたの?」

「行くぞ」

シルフィーの腕を掴むと歩き始めシルフィーは引っ張られる形となった。困惑するシルフィーは頭の中に?が浮かぶ。カルシュの行動にフェンも驚き言われるがまま後を追った。






天にも届きそうなほど大きな火山を降りなければ下にはたどり着けない。


「カルシュ、どこに行くの?」

何も言わず歩くカルシュの背に投げかけるが無言のまま。腕は解放されたが早く歩く彼に遅れずにシルフィーとフェンは追う。


するとシルフィーはピタリと止まったカルシュに勢いよく背中にぶつかる。ぶつけた鼻をさすり軽く睨むと彼は真っ直ぐに前方を見ている。視線を追うように前を見ると茶の地面にシルバーに輝く円形の魔法陣がある。


「あれは?」

「テレポートエリアね」

シルフィーの質問に代わりに答えたフェンは「なるほど」といい頷く。


「これに乗って一番下まで行くのね」

確かめるようにフェンはカルシュに聞くとゆっくりとテレポートエリアを回り始めた。

大きな魔法陣の内側には青白い光が下から上へと舞い上がる。魔法陣が書かれている地面は茶から緑かかった青へと変化していく。


シルフィー達は魔法陣の中へ入るとまばゆく光りだす。包み込むように光を強めると快音を立て消え去った。








草の匂いが鼻をかすむ。目を開ければ低い草地が広がる地にいた。びっくりしたシルフィーは周りを見回すとカルシュとフェンの姿が映る。

火山の山頂ではない草原の景色が目に入り無意識にカルシュに再び視線を移す。


「一番下まで降りたんだ」

カルシュはやっと口を開き少しめんどくさそうに喋る。


「……来い」

短く言い捨てるとまたカルシュはどこかへ歩いていく。


「だからどこへ行くのー!」

慌てて追うシルフィーはカルシュに聞くが答えはもらえない。気に食わない様子なシルフィーは騒がしいほど喋る。

カルシュの考えていることが分からないシルフィーとフェンは互いに顔を見合わせた。