蔓薔薇

偽りの過去

セリナさんと駅で別れた後に
私は店長からイサオさんに
必ず渡すようにと頼まれていた
招待状の事を思い出す。
 
この度、十五周年を迎える会社
のパーティーの招待状だ。
 
今月末の日程なので
もう日にちに猶予はない。
 
私は急いで駅を出て、工房へと
駆けて戻る。
 
荒い息をつきながら、工房の中
を覗くと彼の姿はどこにも
無かった。
 
私はおもいきってドアを開いた

すると、室内で話す女性の声が
聞こえてきた。

その声には特徴があり
聞き覚えのある声・・・

そう、この声はユイの声。

「どうして
 私じゃ駄目なんですか?
  
 彼女は結婚しているって
 弟さんから聞きました」
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