あひるの仔に天使の羽根を

・逆行 煌Side

 煌Side
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各務の建物の地下にある魔方陣は、氷皇と見たあの怪しげな小部屋の真下にあった。


奇怪な装飾品はそのままに、あの時見た住人はいない。


床に描画された三角形を重ねたような幾何学模様のついた床を、桜は外気功で躊躇うことなくぶち抜いた。


俺なんかよりよっぽど瞬発的な決断力あるし、剛胆で派手な奴だ。


そうして大きく開いた穴から見えるのは、魔方陣。


俺達は頷き合って階下に飛び降りて。


恐らくはまた、遠坂のおかげなんだろうが、裂岩糸の顕現が出来るようになったのを確認した瞬間、桜は鬼神化し…その暴れ具合を、俺と玲はとくと拝見させて貰った。


俺達はもう見慣れたからいいけれど、初めてこの姿を見たら卒倒もんだろう。


線の細い…今は短髪で男に見えるからマシだけど、今までのような…ゴスロリの2つ結い(ツインテール)美少女姿であれば、こんな破壊っぷりは本当悪夢にしか思えねえ。


それなりにマニア受けしてるらしいのに、こんな姿みられたら、桜信奉者など一気に夢を壊され、恐怖に霧散しちまうだろう。


まあ、こいつなら…誰が近付いて誰が去ろうが、一向にお構いなしなんだろうけど。


天井の穴を見上げれば、黒山羊の人形が目に入る。


シュブ=ニグラスだとかいう、悪魔の彫像。


魔方陣の真上だったから、千歳が蘇ることが出来たんだろうか。


それともあの黒山羊に拝んでいたおかげなのか。


何の効果かわからないけれど、ゾンビみたいに自我を壊さず、普通の人間らしい"蘇生"を現実化させちまう……愛っていうのは、偉大だ。


どんな形であれ。




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