あひるの仔に天使の羽根を

・双子 櫂Side

 櫂Side
***************

「え? ゲームの登場天使と悪魔?」


氷皇の薄い笑いに、遠坂は怪訝な顔をした。


――KANANというゲームにおける、10体ずつの天使と悪魔は知っているか?


俺は――

玲と遠坂が躍起となっていたゲームの詳細は知らない。


ゲーム概要はそれとなく聞いているが、登場する20体もの天使と悪魔の名前の知識はなく。


「天使は、メタトロン、サンダルフォン、ミカエル、ラファエル、ガブリエル。ザフキエル、ラジエル、ザドキエル。ええ~と、カマエル、ハニエル!!」

指折り名前を紡ぐ遠坂に、芹霞が感心したような声を出す。


「よく覚えてるね、由香ちゃん。あたし基本カタカナ嫌いだから駄目だわ」


お前、英語も国語も不得意だったよな。


「ゲーマー魂を馬鹿にすんなよ? 次は悪魔だ。サタン、ベルゼブブ、アスタロト、アスモデウス。バール、ルキフグス、ベルフェゴール、アドラメルク、ナヘマー。そして最後は、ええと最後は……」


「リリス。唯一の"女"だ」


氷皇が口許で笑いながら言い放つ。


まるで、何かを含んでいるように。


「リリス……? 何か聞いたことがあるような…ああ!! 司狼があたしがその"リリス"だとか。失礼よね、悪魔と一緒にするなんて。大体どんな奴よリリスって。すっごい化け物なのかな」


芹霞は憤っているようだが、


「芹霞ちゃん、判らないようだね。リリスとは、聖書におけるアダムの花嫁。アダムを裏切り、サタンの…敵の大将の妻となった、原初の"女"だ」


愉快そうに笑いながら、氷皇がビールを口に含んだ。

< 1,104 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop