あひるの仔に天使の羽根を

・発作 玲Side

 玲Side
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――動けなかった。


それでなくとも僕の預かり知らぬ領域を持つ男。


僕をいつも弾いて見せつける12年間という永遠の絆を、瞬時に反故にするように…あの櫂すら擦抜ける芹霞。


その2人が見せる新たな絆。


それは"お試し"だの言って僕が縋り付く、そんな脆弱なものではなくて。


そこにあるのは――

僕が欲しいと思う…どんなことでも揺らがない強い絆を感じ取れて。


何故突然?

どうしてこんな状況になっている?


櫂のように怪しげな術にかかったとか、そういう気配はないんだ。


だとしたら――


芹霞は……!?



僕の心臓は悲鳴を上げていた。



直前までの戦闘が祟ったとかの理由ではない。


イクミが敵として現れたことは、多少は驚いたけれども…それでも司狼と相対してからは、覚悟していたものであって。


そこら辺をあえて、白皇だという男が面白おかしく演出したというのなら、随分と虚仮にされている。


そう思えばこそ。


芹霞に揺れ、心臓を乱す僕を悟られたくなくて。


僕は、僕の矜持の為に虚勢を張るしか無くて。


「慢心は――禁物だ。

思い通りにならないのが、現実なんだよ?」


僕は、顔に笑いの仮面を被る。


そう。白皇さえも知らぬ…愉快な現実を与えられるのなら。


「大体、彼女の力では…僕には敵わないんだ。

僕に対する"恐怖"が彼女の身体に染みこんでいたようで、それも術がとけた要因の1つかもね?」


――私は、白皇の手先などではない。


イクミの正体。


――私の主は、刹那様だけだ。



僕が放ったのは――


「イクミのプレゼントさ」


双月牙。


「まさか…イクミと蓮が同一人物だったとは思わなかったけれど」


――私は、刹那様の命により…お前達を助ける。


途端に曇る白皇の顔。



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