あひるの仔に天使の羽根を

・刹那 櫂Side

 櫂Side
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やるなら徹底的に。



玲の精神が遠坂に引き継がれたのか、


遠坂の所業もある意味"えげつなく"。


三日月形の目が思い浮かぶ。


今だ部屋に響く、"愛の言葉"。


そこに真剣さを感じられなかった聴衆は、爆笑の渦に呑まれて身を捩った。


「シロ。何とも可愛い"彼女"じゃないか。これならずっと共に居ても、お前は飽きることはないだろう」


緋狭さんが目尻の涙を拭いながら声をかければ、氷皇の蹴りに沈んだままの白皇は、己の血で濡れた唇をわなわなと震わせている。


「衝撃? 笑撃? あはははは~。シロ。融合したいんでしょ早くやれば? お似合いだよ? あははは~」


氷皇の胡散臭い笑いが、白皇から更なる光を奪う。


ふわり、玲が微笑んだ。



「"美しい""彼女"の完全版。元より喋れない"彼女"が、口を開いて貴方だけに、"永遠"愛の言葉を囁き続ける。

ああ。愛があれば、言葉なんてどうでもいいか」



えげつなく、そう追い打ちをかければ。


ぷつん。


白皇から何かが切れたような音がした。



「お前らああああ!!」



白皇は突如立ち上がった。



その目に浮かぶのは、激しい狂気。



「そこまで私の"彼女"を奪いたいか!!! 私の…私だけの"彼女"は、お前達になど渡すものか!!!」



極度の独占欲が怒りと絶望と混ざり合い。


俺達は、白皇の恋敵となったらしい。



そうとしか、認識出来ないらしい。
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