あひるの仔に天使の羽根を

・切迫 煌Side

 煌Side
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完全に――

俺の不注意だった。



もし俺が。


芹霞とのことでイライラせず、

玲の言葉をちゃんと聞いていたならば、

俺は"無知の森(アグノイア)"に行こうともせず、

俺達はあんな悪魔みてえな面した男達に追われることなく、

旭も月も、ずっと笑っていられた――。


「……ッ!!」


全て俺が悪い。


後悔ばかりが胸に渦巻いて。


愚鈍な俺はいつもそうだ。


事の状況を飲み込んだ時には既に手遅れで。


あんなチビ達を助け出すことすら出来ねえ、情けねえ自分に嫌気がさす。


助けて貰ったのによ。


気に食わねえガキだったがよ。


俺より闘い慣れた、謎だらけのおかしなガキだったがよ。


――きゃはははは。


あんなスケスケで、何命かけてんだよ、月。


――信じたいからこそ、行けません。


信じてあんな姿になっちまったのかよ、旭!


俺は馬鹿で――。

俺は軽率で――。

俺は無力で――。


子供だと軽んじた俺こそが、状況判断すら出来ねえ一番の子供で。


それは落ち込むにいいだけの状況だったから、全く気づかなかったんだ。


櫂と芹霞が居なくなっていることに。





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