あひるの仔に天使の羽根を
:或る心象風景 1.

囁くような声が聞こえる。


――汝、もし永遠の生を望むなら

――もし変わらぬ何かを求むなら



採るべき道は1つなのだと。



――彼の者を求めよ。



一体、此処は何処なのか。

何故、こんな場所に迷い込んだのか。


一切の光無き、閉塞的空間に。



――彼の者に全てを委ねよ。



何かが腐れた饐えた臭いがする。


何かが毟(むし)られる音。

何かを噛(は)む音がする。



――そして汝、選べよ。



漆黒の闇に滲む、鮮やかな赤色。



――汝、彼の者に食(は)まれ、



一面、赤、赤、赤。


赤色は漆黒を凌駕すると、ぬめぬめと鈍い光を放ち、何かの山を象る。



――彼の者の中で、永遠を生くるか。



其の頂で――

蠢(うごめ)くのは何なのか。


一体何をしているのか。



――それとも汝、彼の者を食み、



嗚呼あれは…――



――彼の者と成して、永遠を生くるか。



髑髏の山――?



――汝、選べよ。



悍(おぞ)しい赤が五感を狂わせる。



――彼の者を食むか、食まれるか。



刹那に心震えたのは…


戦慄か狂喜か。




――さあ汝、如何にせん?



何処かで何かが、壊れたような音がした。



そう、だから私は―――。





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