あひるの仔に天使の羽根を

・決別

****************


――初めて見る顔…でもないね?


美妙な輪郭だけで構成された、蠱惑的な美貌。


浮世離れという表現では到底追いつかない、戦慄さえ覚える美しさ。


そして、妖しく揺らぐ紅紫色。


この男は――

あたしのことを知っているのだろうか。



いつ?



「……あたし達何処かで会った?」



記憶ないけれど。



すると男は、あたしの中の何かを走査するように、無言で紅紫色の瞳を向けて。



「……忘れられる程

印象無かったかな、オレ」



そして項垂れる様に前に頭を垂らすと、突然――



「な、何!?」



笑い出した。



妖艶な声色響かせながら、双肩を揺らして笑っている。


そして笑いを止めると、顔を上げる。


瞬時に切り替わる、動の表情。



獰猛な肉食獣のような飢えた光湛えた、


憎悪とも見間違えるような眼差し。



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