あひるの仔に天使の羽根を

・刹那 煌Side

 煌Side
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刹那という名を聞いた時、俺にはチビ陽斗の言葉が浮かんだんだ。


教祖の名前も確か、刹那だったはず。


だとしたら、これから向かう先は教祖の場所か?


だけど玲の口ぶりでは、どうも違う。


旭が言っていた刹那は、どの刹那だ?


また違う刹那なのか?


"刹那"って聞く度胸糞悪くなるのによ、なんでこんなに刹那が出てくるんだ?


色々考えていたら、玲に"教祖の刹那"を言うタイミングを逃してしまった。


まあいい。


後で言えばいい。


そう思っていた時に鳴り響いた不気味な鐘の音。


現れたのは、黒装束の死神。


殺気にも似た凶悪な気を纏い、生きた女に躊躇いなく鎌を振り下ろせる冷酷さ、そして実際に一瞬にして頭を刎ね飛ばすことが出来る芸当は、半端ねえくらい化け物じみているけれど。


だけど、これだけは判る。


あれは、人間だ。


男を喰らう"生き神様"なんてものとは種が違う…言わば狂気に取り憑かれた人間の果て。


だけどそれは精神の狂いによる無差別的なものではなく。


はっきりと意思を持ち、冷静に選別しているんだ、刈る対象を。


それは裏世界の玄人級の暗殺者と大差なく。


殺す手段が何であるかだけの違いで。


どちらにしても、真っ当な精神ではないのかもしれねえけれど。


不気味な鐘の音の時間が過ぎれば、街は以前の賑わいを見せていた。


俺には死神という存在よりもむしろ、何事もなかったかのように振る舞える此処の連中の方が気になった。


普通パニックになるだろ。


まだ路傍に頭が転がって、胴体以下が道を塞いでいるんだぞ!?


だけど誰もが無関心で、無表情で通り過ぎる。


まるで道に転がる石ころ扱いだ。


関心を示すものがあるとすれば、俺、もしくは玲。


"男"だ。


大体、男が何だって言うんだよ。


女がそんなに偉えのか!?


殺人よりも胡乱なものなのか!?


ありえねえ。


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