あひるの仔に天使の羽根を

・上陸

*********************

冥(くら)くて冷たい世界――。


此処は闇?


――違う、ここは水底。


冷たい、冷たい水の底。


水圧に捻れそうな手足。


もがいてももがいても、


あたしの中に冥い水が鬩ぐ。


体中の穴という穴に、奔流が押し寄せる。


何処までも何処までも。



堕ちていく――。



不思議と懐かしいその感覚。



まるで――



長年慣れ親しんだ闇のように。



親しみを覚えるのは、



闇だから? 


水だから?



あたしにはよく判らない。



判らないけれど、



苦しいの。


身体が痛いの。



助けて。



「……か」



助けて。



――選べよ。



あたし死にたくない。



――汝、選べよ。




「芹霞!?」






< 66 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop