あひるの仔に天使の羽根を

・対峙 桜Side

 桜Side
****************


早く。


一刻も早く。


芹霞さんを櫂様に遭わせねば。


――須臾、好きだ……。


あれは櫂様じゃない。


櫂様じゃないんだ!!!


何故こんなに哀しい気持ちになるのか判らない。


どうして私がこんなに切ない心になるのか判らない。


私は、櫂様が芹霞さんを愛する様子を間近で見てきた。


時に苦しそうで。


時に嬉しそうで。


『気高き獅子』と呼ばれ、冷徹なまでに紫堂を拡大している櫂様の、唯一の人間らしさを垣間見せるのは芹霞さんの隣だけで。


芹霞さんをもって櫂様は完璧になられるのだ。


須臾じゃない。


あんな、芹霞さんに悪意を見せる女ではない。


あんな女に惑わされるのは、櫂様ではない!!!


櫂様に、真実の"永遠"を。


偽りの愛なんて、かき消してしまえ!!!


私は、正門を抜けてひたすら走る。


もう景色なんてよく判らない。


身体の不調なんて感じられない。


ただひたすら。


私は芹霞さんに会いたかった。


芹霞さんなら、どうにか出来ると信じていた。




< 691 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop