あひるの仔に天使の羽根を

・砂塵 櫂Side

 櫂Side
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何で、皆――

祝福してくれないんだろう?



玲や煌や桜、遠坂も。


誰1人として冷たい目を寄越し、須臾を弾こうとする。


皆、芹霞のことばかり気にして、俺の須臾が蔑ろにされている。


煌も玲も。


芹霞を"女"として見つめ、激しい恋情を抱いていることは知っている。


だけど、それに気づいていないのか、或いは気づいていてそうなのか、芹霞はのらりくらりとそれをかわし、俺に執着を示してきた。


俺と芹霞は唯の幼馴染、唯の腐れ縁。


それだけの関係なのに、俺に"特別"を求められても正直困る。


だけど、無碍に出来ない過去があるのは事実で。


それ故今まで一緒に居たけれど。


だけど、長年想い続けた須臾が"恋人"となった今、今まで通りでいられては本当に困る。


芹霞が紫堂と無関係であるのなら、俺は須臾の為に、立場を判らせないといけない。


今までのように大きい顔をされては困るんだ。


芹霞がどんなに俺に"永遠"を求めようと、俺はそれには応えられない。


俺が永遠を捧げる相手は、須臾だと決まっているから。


須臾が、俺の運命の相手だから。


現実を突きつけると、芹霞は部屋から出て行った。


俺は、須臾が安心したように微笑むのが嬉しくて。


正しいことをしたのだと実感していた。


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