あひるの仔に天使の羽根を

・現実 櫂Side

 櫂Side
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心が満たされない。



須臾と想いが通じた時は、あんなにも幸せで満ち足りていたというのに、それを皆に宣言した途端、どうだ?



場の空気は不穏で。


煌は戻ってこない。


玲は俺に敵意を向け。


桜までもが俺を"偽り"だと、事実上、俺を詰った。


確かに俺は紫堂の次期当主で、それを捨ててまで須臾と添い遂げようと覚悟していることに、紫堂に染まった皆が快く思わないのは判る。


だけど。


だけど。


なんだろう、この心の空虚感。


須臾が居るのに。


須臾が手に入ったというのに。


この孤独感。



違うんだ。


皆の目は、紫堂を捨てることに対しての敵意ではない。


芹霞。


幼馴染の芹霞を切り捨てたことに対しての敵意だ。


どうして?


芹霞を好きなくせに、どうして俺が芹霞を突っぱねるとそこまで俺を責める?


どうして須臾をそこまで嫌う?


どうして芹霞ばかりを持て囃す?


おまけに須臾も皆を嫌ってしまい、クビにしろと煩い。


宥(なだ)めれば、どうせ俺は此処で暮らすのだから、早く玲に次期当主の権を渡して、煌と桜を引き取って貰えと言い出す。


俺としては、此処でも皆と暮らしていけたらと思っているのに、上手くいかない現実。


板挟みになって正直しんどい。



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