あひるの仔に天使の羽根を

・狼狽 櫂Side

 櫂Side
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――…考える時間が欲しい。


俺は――

思わず言ってしまった。



泣いて喚いて俺を詰問する須臾を目にしても、取り消す気にもならない。


判っていたことなのに。


皆と離れる事態を憂い、非常に未練がましく。


否、それ以上に。


芹霞の顔を見れなくなってしまうということがいたたまれず。


そんな中、見せつけるように指を絡めさせて手を繋ぐ玲と芹霞。


玲を意識して真っ赤に俯く芹霞に……何故か怒りを感じて。


俺が居なくなっても平気そうな芹霞に、少しは俺のことも考えろと言いたくなった。


芹霞の中に俺は居ない。


居るのは玲だけ。


だから余計に――

完全な別離の時期が早められることに、躊躇し……狼狽したんだ。


芹霞より須臾を選び、共に生きると決めたはずなのに。


あれ程手に入れたかった須臾相手なのに。


俺が儀式に出てしまえば、俺はもう…完璧に芹霞との接点が失われるのかと思えば、


そして芹霞は玲と共に生きるのかと思えば、


それが――

溜まらなく嫌で。


どんなに身勝手なことを言っているのか、自分でも判る。


判るけど、どうしようもないんだ。


抑えが利かない。


儀式如きに振り回される現状が許せない。



儀式――?



何で俺はそれに参加しないといけないんだ?


そもそも。


それって一体なんだ?





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