あひるの仔に天使の羽根を

・覚悟 玲Side

 玲Side
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「玲、玲!!! 

傍に居て、恐い恐いのー!!!」



僕に縋り、震え泣く芹霞の姿は尋常じゃなかった。


意識を飛ばす芹霞。


櫂を恐怖していた。


今まで抑圧されていた櫂への感情が爆発したのか。


それだけでは説明できない芹霞の姿。


それを見ていた櫂は――

破裂寸前だった。



絶望感に打ち拉(ひし)がれた切れ長の目は、やがて僕に対しての嫉妬に変わる。


それはまるで、以前の僕のよう。


無条件に芹霞に頼られる櫂に対する、僕の嫉妬の情。


だけど櫂。


お前が選んだのは芹霞じゃない。


何度も何度も、須臾を選んだんだ。


お前の長所でもあり欠点でもあるのは、その責任感の強さ。


それは紫堂で培われてきたお前の鎧。


それは芹霞だけが簡単に取り外せるものだった。


だけど。


芹霞以外の女が心に忍んだ今となっては、お前の心を頑なに縛り付けるだけの呪いの道具と化し、お前が外部からの圧に乱されぬよう、そしてお前自身が鎧を打ち破って暴挙に出ぬよう、お前を監視し締め上げる。


そして。


お前が"責任"を感じる限り、お前は須臾を選び続けるだろう。


例え心の奥底で想う女が別に居ても、お前なら手を出さない。


紫堂や仲間に執着があっても、切り捨てるのはその"執着"だ。


絶対的なる…潔い自制心。


そういう男だということを、僕はよく知っているから。


お前は僕に、須臾に……義理だてるだろう。


切り崩すのは周囲ではなく、己自身だ。



そしてそれは――


僕にとっての切り札。



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