天狗様は俺様です!
第五話 演劇練習


「『おお、なんと美しい姫なのだろう』」

 カイが、少し大げさな身振りで王子のセリフを口にする。



 文化祭もあと僅かとなった今は、劇の練習も最後のツメに入っていた。


 何度目かの通し練習。

 皆真剣にやっているから、私も自然と真剣に頑張れた。

 そのおかげで劇はかなりの出来になっていると思う。



 ……一つの点を除いては……。


「『愛しい白雪姫、私の口付けで目を覚まして――』」

「カーット!!」

 カイのセリフは、監督でもあるミヤちゃんの大きな声で遮られた。

「戒くん! あなた大根すぎ! 何でそんなに棒読みなの!?」

 ミヤちゃんの叫びに、カイを除いたクラスメート全員が頷く。



 そう、一つの問題とはカイのセリフの棒読みなんだ。

 演技したことないとは言っていたけど、まさかここまで何の感情も入らない言い方するとは思わなかった。


「そうは言うがよ。こんな恥ずかしいセリフ真面目に言えるか!」

 カイはヤケになったように叫ぶ。



 いや、言おうよ。
 演技なんだから。





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