その日は雨だった。

しとしとと降る、静かな雨。

「こんにちは」

「いらっしゃい」

雨がお客さんを運んでくる。

いつもより少しだけ混んだ店内で、晴斗さんの笑顔だけは変わらない。

「いつものでいい?」

コーヒーの香りを漂わせて、目の前を通り過ぎる瞬間、ちゃんと私を見てくれる。

「はい」

それだけで、幸せになれる。