舞風─君をさがして─

優しさを感じて

「ちくしょ──!!!あいつ!!!」

平助は右手を力いっぱい床に叩きつけた。

「とりあえず近藤さんと土方さんに連絡しよう」

「……そうだな。ってこんな時でも冷静な判断ができる総司が羨ましいよ」

「フフ、そんなものなのかな」

総司はポケットから携帯を取り出した。





「あのさ……俺に隠してることあるだろ。その妙に余裕あるとこ、な〜んかムカつく」

彼の電話が終わるや否や平助はすぐさま話を切り出した。
きっと自分の焦る気持ちに対して、落ち着き払っている総司の態度が気に食わないゆえの、最大の抵抗──なのかもしれない。

「どうやら、平助君には隠し事はできそうにないみたいだ」

そう言って、総司は床に目線を落とす。

「さっき、山南さんが居たところ、うっすらだけど切り込みが見える」

「そっか、つーことはこの下に奴らの秘密のアジトがあるってことか!そーと決まれば早速、千鶴を助けに行こうぜ」

「待った!」

「なんだよ」

「多分、この入口は閉ざされている。それに上手く別の入口を探して侵入できたとしても、二人だけじゃ太刀打ちできないのは火をみるよりも明らかだ」

二人の脳裏には先程の吸血鬼まがいたちの姿が過ぎる。

「た、確かに……でも!こうしてぐずぐずしてる間にも千鶴がっ!!」

「土方さんには連絡つかなかったけど、近藤さんには繋がったから、『新撰組』が揃うまでアジトの入口でも探しながら待とう。それがあいつらに勝つための近道だ」



「ちぇっ!やっぱ総司には敵わねぇや」
< 23 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop