陰陽(教)師
第2話 誰の左手【P73~P161】
ドライバーは頭を抱えていた。

目の前にはさっきまで運転していた2tトラックがある。

だが今は右後輪が側溝にはまってしまっている。

現在時刻は午前7時。

人通りはまだない。

車は2台、通り過ぎた。

道幅があったので、クラクションを鳴らされることは無かったが、車を降りて手伝ってくれることもなかった。

ちらりとこちらを見ただけで、通り過ぎていってしまう。

普通乗用車ならいざ知らず、トラックでは手を貸したところで…と考えたのだろう。

出勤途中で急いでいる、というのもあるのかもしれない。

「仕方ないか」

とドライバーは、携帯を取り出した。

登録してあるJAFの電話番号を呼び出そうとしたその時

「脱輪ですか」

背後からそう声をかけられ、振り向いた。

そこには壁があった。

壁の高さは2メートル。

学生服と顔を見て、ドライバーは壁の正体が人間だと気付いた。

声の主はそれほどの体格の持ち主だったのだ。

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