ひねもす月
4 深緋 消せない心

暑い……。
頭がおかしくなりそうだ……。


夏休みも間もなく終わる日、母は、突然やってきた。


「学校にも行けるようになったみたいだから、連れて帰ろうと思って」


第一このあたりの学校、ろくな偏差値じゃないじゃない。


相変わらず、鼻につくしゃべり方。
向こうの学校に入ったって、大した大学に行けるわけでもないのに。
……そもそも大学に行くのかどうかもわからないけれど。


母は自分もここで育ったことを棚にあげて、一方的に言いたいことだけまくしたてる。


「夏休み明けから戻りなさい。編入試験の手続きはしてあるから。明後日だけど、大丈夫よね」


意見を聞くことのない、宣言。


「彼方はできる子なんだから、こんなとこに居ちゃもったいないのよ。今ならまだ間に合うわ」


何がもったいなくて、何に間に合うと言うのか。

カナタは、虚ろに庭を眺めながら、この時間がさっさと過ぎてくれることを願っていた。

本当は同じ空間にいたくない。

息が詰まる。

だけど、反論するのも億劫だった。
のらりくらりとかわす祖母に、キーキーとヒステリーに嫌みを言う声。
苛立ちが、つのる。



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